熊本地方裁判所 昭和44年(ワ)463号 判決
主文
原告らの請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
事実
一 原告らは「被告は各原告に対し、別紙目録記載の各原告所有株式の株券を引渡せ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、請求原因として次のとおり述べ、被告の抗弁事実を否認した。
「(一) 訴外肥後合板株式会社は、昭和一九年三月二五日に合板単板の製造販売を目的とし、原告高木藤雄によつて設立された会社であり、昭和四一年四月増資によつて資本金八八〇〇万円となり、原告藤雄は五七万三四一四株、原告ツタ子(妻)は三万一二〇〇株、原告信雄(長男)は二万七三〇〇株、原告美智子(娘)および原告義雄(二男)は各二万五三五〇株の株式をそれぞれ所有していた。
(二) ところが、昭和四二年一一月中訴外会社は資金難のために合板製造の原木の入手が不能となつたので、原告藤雄が被告会社出張社員に原木の出材を求めたところ、同人は原告らの有する株式を預けてほしいと言うので、同原告はその言にしたがつて別紙目録記載株式(以下本件株式という)の株券四三四枚を同人に交付した。
(三) しかしながら、被告は訴外会社に対して原木の供給をしなかつたから、右交付は原因なくしてなされたものというべきであるばかりでなく、原告藤雄以外の原告らの株券については、同人らの承諾なしに交付されたものであり、しかも、かりに右株券の交付が株式の譲渡担保にあたるとしても、同会社の定款第一一条所定の取締役会の承認がないから無効といわなければならない。
(四) よつて、原告らは被告に対し、前記目録記載の各原告所有株式の株券の引渡しを求める。」
二 被告は主文同旨の判決を求め、答弁および抗弁として次のとおり述べた。
「請求原因事実中、(一)は争わない、(二)のうち被告が本件株式の株券の交付をうけたことのみ認め、その余は否認する、(三)は知らない。
被告が本件株式の株券の交付をうけた事情は次のとおりである。すなわち、昭和四二年一一月頃現在、被告は訴外会社に対して金三〇〇六万三八〇五円の債権を有していたので、右債権の確保について同会社と種々折衝の結果、同月二七日に至り、同会社の代表取締役であつた原告藤雄および原告信雄・同義雄の三名は被告の前記債権を担保するために本件株式を譲渡したものである。しかして、原告ツタ子・同美智子の株式譲渡については、右三名の原告若しくは原告藤雄が代理人としてこれを行なつたものである。」
三 証拠関係(省略)
別紙
目録
肥後合板株式会社株式
第一 高木藤雄分
三三万九五〇〇株(一万株券二四枚、五〇〇〇株券九枚、一〇〇〇株券三四枚、一〇〇株券一九〇枚、一〇株券一五〇枚)
第二 高木ツタ子分
一万六〇〇〇株(一万株券一枚、一〇〇〇株券六枚)
第三 高木信雄分
一万二〇〇〇株(五〇〇〇株券一枚、一〇〇〇株券七株)
第四 高木美智子分
一万株(五〇〇〇株券一株、一〇〇〇株券五株)
第五 高木義雄分
一万株(五〇〇〇株券一枚、一〇〇〇株券五枚)
以上合計三八万七五〇〇株(四三四枚)。